マレーシア 第5次大規模太陽光発電プログラム (LSS5)
本稿では、今年4月から受付が開始された第5次大規模太陽光発電プログラム(Fifth Large Scale Solar「LSS5」。LSS-Peralihan Tenaga SuRia「LSS PETRA」とも呼称されますが本稿では「LSS5」で統一します。)について解説していきます。
LSS5の目的は、端的に再生可能エネルギーの導入促進といえます。
マレーシアでは電力小売りをテナガ・ナショナル(TNB)等の国有企業が独占しているため、再エネ発電事業者が需要家に対して直接電力を販売することはできません。
一方、再エネ発電容量を増加させることは、2023年8月に公表された「エネルギー移行ロードマップ」(*1)に沿ったエネルギー移行を実施するために必要不可欠となります。
LSS5は、再エネ発電事業者の事業開始・拡大の動機付けとなるものです。
LSS5は、2024年4月1日にエネルギー移行・水資源変革省(Ministry of Energy Transition and Water Transformation)から入札プロセス開始の発表がありました。
入札期限は同年7月25日までとされていますが、入札希望者は、入札提案書を4月1日から同月16日までに3,000リンギで購入する必要がありました。
本稿公開時点では残念ながらこの購入期間が終了しているため、入札提案書を購入していない場合はこれからLSS5に入札することはできませんが、今後LSS6が実施される可能性が高いことから、本稿では参考情報としてLSS5について解説していきます。
LSS5に割り当てられるグリーンエネルギーは2ギガワット(GW)であり、3年前に実施された第4次大規模太陽光発電プログラム(LSS4)の割当量の2倍以上となります。このことからも、政府が太陽光発電を以前より重要視していることが伺えます。
また、このLSS5は昨年実施されたCorporate Green Power Programmeの流れをくむものと考えられます。
エネルギー委員会(Energy Commision「EC」)の資料によれば、太陽光発電の発電形態や会社の形態等により4つに区分され、ぞれぞれの区分で許可される発電容量は1メガワット(MW)から500MWまでとなります。
ECの資料によれば、各区分の発電容量・詳細は以下のとおりです。*2
なお、LSS4では認められなかった外国企業の参加も、一定の要件の下で認められることとなりました。
区分 | 定格容量 | 割当量 | 対象案件・要件 |
1 | 1MW〜10MW未満 | 250MW | 屋上または地上設置型太陽光発電マレーシアで設立された法人またはコンソーシアムブミプトラが最低51%の株式を保有マレーシア中小企業公社から中小企業ステータス証明書を取得している |
2 | 10MW以上30MW未満 | 250MW | 屋上または地上設置型太陽光発電マレーシア法人またはコンソーシアム(マレーシアで設立された少なくとも1つのブミプトラ系企業と、ブミプトラ系企業の出資比率が51%以上の外国企業からなるコンソーシアム)ブミプトラが最低51%の株式を保有 |
3 | 30MW以上500MW未満 | 1,000MW | 屋上または地上設置型太陽光発電マレーシアで設立され、マレーシア国内資本が51%以上の法人少なくとも1社がマレーシアで設立された法人であり、かつマレーシア国内資本が51%以上であるコンソーシアム |
4 | 10MW~500MW | 500MW | 水上太陽光発電マレーシアで設立され、マレーシア国内資本が51%以上の法人少なくとも1社がマレーシアで設立された法人であり、かつマレーシア国内資本が51%以上であるコンソーシアム |
ECによると、LSS5の下で開発される太陽光発電所は、2026年までに稼働する必要がある、とされています。
LSS5の導入に伴い、TNB等の国有電力会社は、総容量2GWの導入に備えた系統を拡充する必要があります。
ただ、系統の拡充は一朝一夕では不可能であり、系統の拡充と同時並行で、既存の系統を有効活用するための施策を行うことで、系統に負担をかけずに送電する仕組みの整備が急務となります。
日本でも各電力会社が系統の拡充を進めていますが、時間と費用が掛かることから、既存の系統の有効活用を行うため、政府が補助金を拠出して系統用蓄電所の整備を進めています。
私見ですが、マレーシアでもLSS5をきっかけに系統用蓄電所事業が活発化する可能性があるのではないか、と考えています。
今回はマレーシアのLSS5について解説しました。
日本だけでなく、海外の再生可能エネルギーに関する記事も投稿していこうと考えています。
*1 The National Energy Transition Roadmap
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