目次
はじめに
今回は、太陽光発電所におけるケーブルの盗難について考えてみたいと思います。
太陽光発電所におけるケーブル盗難はここ数年急激に増加しており、事業者や投資家にとって大きな運営リスクとなっています。
最近関わらせていただいた案件では、太陽光発電所の保有会社が、ケーブルの盗難を恐れて発電所を譲渡したいとのご意向から、譲受先を探されている、というものがありました。
実際の盗難の事例では、このようなニュースがYouTubeに上がっています。
この背景として、銅価格の高騰や、北関東や東北など、特定地域における施設の集中などが挙げられ、全国的に統計データでその深刻さが示されています。
一方で、GPS追跡や特殊被覆・アルミケーブルの導入など、実際に効果が確認された防犯対策も多く報告されています。
以下では、統計データを示しつつ、現状を数値で把握するとともに、具体的な対策事例についてもふれてみたいと思います。
ケーブル盗難の統計データによる現状把握
太陽光発電所関連の被害件数
警察庁の「金属盗対策に関する検討会」の資料によれば、太陽光発電施設における金属ケーブル窃盗の被害状況は以下のとおりです。
2023年
認知件数 5,361件
検挙件数 316件
検挙率 5.9%
検挙人員 61人
2024年6月末時点
認知件数 4,161件
検挙件数 255件
検挙率 6.1%
検挙人員 60人
(引用元:警察庁「金属盗対策に関する検討会」第1回資料)
地域別の発生傾向
特に関東圏において被害が集中していることが明らかです。
読売新聞のニュースによれば、以下のような地域別内訳が示されています。
茨城県
2023年単年では約2,889件で、2024年上半期においてはまた重要な被害が確認され、特に金属くず取扱業者の集中や、組織的な犯罪の関与が指摘されています。
栃木県
1,132件
群馬県
1,108件
また、関東7都県においては、被害の約90%が集中しているというニュースもあります。
盗難発生の背景と要因
犯罪発生の背景にはいくつかのものが考えられますが、主なものは以下のとおりです。
経済的背景
銅価格の高騰が盗難の大きな動機となっていることは明らかです。
読売新聞のニュースによれば、2024年3月時点で銅の価格は1トンあたり約134万円に達し、5年前の倍近くとなっているとのことです。
組織犯罪の関与
特定の外国人組織犯罪グループが関与している事例も報告され、警察庁の上記の資料でも、カンボジア人が大きく関与していることが伺えます。
発電施設の立地と構造的要因
平野部に大量の太陽光発電所が集積している北関東地域では、施設間の距離が近く、一箇所で複数施設に対して同時に狙われるリスクが高いと考えられます。
最新の防犯技術とその効果
近年、技術の進歩により多数の防犯対策が実施されています。
以下は、主な対策手法とその効果、導入コストの例です。
GPS追跡装置
盗難発生時に5分以内で位置情報通知が可能なものまで出てきているようです。
アルミケーブルへの置換
銅価格の上昇については上述のとおりですが、価格が低いアルミケーブルを利用する取組みも有効だと考えられます。
例えば古河電工さんの取組みはこちらをご覧ください。
特殊被覆ケーブルおよび蛍光塗料ケーブル
特殊被覆ケーブルとして、識別用蛍光塗料が塗布されたケーブルも効果があるようです。
今後の展望
現状、太陽光発電所のケーブル盗難は増加傾向にあり、特に関東圏における被害件数と被害額の増大が深刻な問題となっています。
上で説明したとおり、技術の駆使、地域や官民の連携、そして法整備、例えば流通業者への規制などが必要だと思われます。
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