はじめに

今回は、太陽光発電や風力発電と比べるとあまりなじみがないと思われるバイオマス発電をとり上げます。
バイオマス発電は、再生可能エネルギーの一つとして注目されています。
特に、カーボンニュートラルの特性を持ち、地域資源を活用することで循環型社会の実現に寄与する点が評価されています。
以下では、バイオマス発電の基本、メリット、課題、そして将来の展望について説明します。

そもそもなぜバイオマス発電が再生可能エネルギーに位置づけられるのか

バイオマス発電は、木材を燃焼することにより発電する仕組みであるため、感覚的に、バイオマス発電は再生可能エネルギーといえるの？という素朴な疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないかと思います（実は私自身も今でも完全にしっくりできていないところです。）。
バイオマス発電が再生可能エネルギーに位置づけられる理由は、主に以下の点にあります。

カーボンニュートラル特性
バイオマスは、植物や動物などの生物資源から生成されます。
植物は成長過程で大気中のCO2を吸収するため、バイオマスを燃焼した際に排出されるCO2は、理論的には植物が吸収した分と相殺されます。
このため、化石燃料のように新たなCO2を大気に追加することがなく、カーボンニュートラルと見なされています。
また、持続可能な森林管理を行うことで、バイオマス資源の循環利用が可能になり、長期的な炭素固定効果が期待できます。

再生可能な資源
バイオマスは、生物資源を再利用することで無限に供給可能です。
例えば、森林伐採後の残材、農業廃棄物、食品廃棄物、家畜糞尿などを燃料として利用することができます。
これにより、資源の枯渇リスクが低く、持続可能なエネルギー供給が可能です。
さらに、廃棄物処理の一環としても機能するため、廃棄物削減や処理コストの削減にも寄与します。

循環型社会への貢献
バイオマス発電は、廃棄物や未利用資源をエネルギーとして活用することで、廃棄物削減とエネルギー生産を同時に実現できる発電方法です。
これにより、資源の有効活用や環境負荷の低減に貢献することができます。
また、地域の農業や林業の副産物を活用することで、地域経済の活性化にもつながります。

バイオマス発電の基本と種類

バイオマス発電は、生物由来の有機性資源を利用して電力を生み出す仕組みです。主な発電方式には以下の3種類があります。

直接燃焼方式
生物資源を直接燃焼させ、水蒸気でタービンを回す方式です。

熱分解ガス化方式
生物資源を加熱して可燃性ガスを生成し、ガスタービンを回す方式です。

生物化学的ガス化方式
家畜糞尿などを発酵させ、バイオガスでガスタービンを回す方式ですし。

これらの技術は、さまざまな種類のバイオマス資源を効率的に活用するための選択肢を提供します。

メリットとビジネスチャンス

バイオマス発電の主なメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

カーボンニュートラル
植物が成長していく過程でCO2を吸収するため、燃焼時のCO2排出量を相殺することが可能です。
時間的には、先にカーボンポジティブになったものが燃焼によりカーボンニュートラルになる、ということになろうかと思います。
また、持続可能な森林管理や廃棄物の活用により、炭素循環を最適化できます。

地域の活性化
地産地消を促進し、地方経済の発展にも寄与することができます。
特に、地方の農林業と連携することで、地域資源を最大限に活用するビジネスモデルの構築が可能です。

安定した発電
太陽光発電や風力発電は天候に大きな影響を受けますが、バイオマス発電は天候に左右されにくく、他の再生可能エネルギーに比べて安定性があるということはいえます。
この安定性はベース電源となるためにはとても重要で、バイオマス発電はベースロード電源としての役割を果たすことが期待されています。

課題とリスク管理

一方で、バイオマス発電には以下のような課題も存在します。
この点に関連して、先日「2025年の再生可能エネルギー政策変更とその影響 – 調達価格等算定委員会の「令和7年度以降の調達価格等に関する意見」を踏まえて」という記事も投稿していますので是非ご覧ください。

発電コストの高さ
バイオマス発電のコスト構造は、燃料の収集、運搬、貯蔵、そして維持管理に大きく依存しています。
特に、広範囲からのバイオマス燃料の集荷は、物流コストを押し上げる要因となりえます。
また、燃料の品質や水分量によっても効率が変わり、発電コストに影響を及ぼします。
これに対し、効率的なサプライチェーンの構築や、地域資源を活用した地産地消型のモデルが求められることになります。

食料資源との競合
一部のバイオマス燃料（例: バイオエタノールやバイオディーゼル）は、トウモロコシや大豆など、食料としても利用可能な農作物を原料としています。
この場合、食料価格の上昇や、食料供給の不安定化につながる可能性があります。
これを回避するためには、非食用バイオマス（例えば、木質バイオマスや農業廃棄物）の活用が重要となります。

燃料の輸入依存
日本国内では、安定的に供給可能なバイオマス資源が限られているため、特に木質ペレットやパーム油などは東南アジア諸国からの輸入に依存しています。
輸入に依存する限り、為替リスクや供給国の政策変更によるリスクを必然的に伴うことになります。
この課題を解決するためには、企業としては、輸入先の多様化や、国内資源の開発・確保に注力することが必要になります。

環境負荷の可能性
バイオマス発電はカーボンニュートラルとされていますが、燃焼プロセスや燃料の輸送時にはCO2が排出されます。
また、森林伐採を伴う場合、地域の生態系や生物多様性に悪影響を及ぼすリスクも考慮する必要があります。

企業がこれらのリスクを管理するためには、安定的な燃料調達先の確保、コスト効率の改善、環境影響評価の徹底、そして持続可能な調達基準の導入が求められます。

まとめと今後の展望

バイオマス発電の普及には、技術的・経済的な課題の克服が不可欠です。
現在、技術革新や政策支援の強化により、バイオマス発電のコスト削減や効率向上が進んでいます。
特に、地域資源を活用した小規模分散型発電が注目されています。
現在、日本ではバイオマス発電のプロジェクトが活発に動いているとはいいにくい状況ではありますが、今後活発化することを期待しています。