目次
はじめに
今回は流通業界のCO2削減の取組みについて取り上げてみます。
近年、企業の環境負荷低減がますます重要視される中、特に流通業界におけるCO2削減の取組みが注目されています。
例えば、花王とキリンビバレッジは、拠点間輸送において協業し、年間300台以上のトラック運行を削減することで、CO2排出量を約15%削減する試みを開始しました。
これは、従来の片道輸送ルートをつなぎ、空車区間を有効活用することで実現されるものです。
このような企業間協力は、物流効率を向上させるだけでなく、持続可能な経済活動の一環としても重要であると考えます。
そこで、本記事では、流通業界におけるCO2削減の現状と取組みを紹介し、今後の企業が取り組むべき課題について考えてみます。
企業のCO2削減に関する取組み(一般論)
世界的な脱炭素社会の実現に向けて、企業は、大小の差はあっても、多角的なアプローチでCO2削減に取り組んでいます。
特に、企業活動全体でのCO2排出削減が求められるようになってきています。
具体的には、再生可能エネルギーの活用により、企業の工場やオフィスの電力を太陽光・風力などの再生可能エネルギーに切り替えることで、大幅なCO2削減が期待できますし、実際に取り組んでいる企業も多い印象です。
特に、大企業では自社内に発電設備を導入し、エネルギーの地産地消を実現する動きが加速しています。
エネルギー効率の改善では、LED照明の導入や、高効率な空調システムの活用により、企業の消費電力を大幅に削減することが可能です。
また、デジタル技術を活用したエネルギーマネジメントシステム(EMS)の導入が進んでおり、リアルタイムでエネルギー消費を監視し、無駄を最小限に抑えることが可能になっています。
また、物流の最適化を行うことで、輸送に伴うCO2排出量を削減することが可能となります。
例えば、配送ルートの見直し、共同配送の実施、自動運転技術の活用などが有効な手段です。
上記の花王とキリンビバレッジの取組みはこれに該当すると考えられます。
カーボンオフセットの活用により、企業が排出したCO2を植林や再生可能エネルギープロジェクトへの投資によって相殺することも可能となります。
カーボンクレジット市場の発展に伴い、より多くの企業が活用しやすくなっていくものと考えます。
こうした取組みにより、企業は環境負荷を低減することと同時に、経営の効率化やブランド価値の向上にもつなげることができるものと考えています。
流通分野とCO2削減
流通業界は、CO2削減の鍵を握る分野の一つです。
特に、物流ネットワークの最適化や輸送手段の見直しが大きな影響をもたらします。
輸送の効率化
企業間協力による物流ネットワークの共有を進めることで、無駄な輸送を削減し、CO2排出を大幅に抑制することが可能となります。
例えば、上記の花王とキリンビバレッジの協業のように、異なる企業が物流資源を共同利用することで、運送効率の向上が期待されます。
また、AIを活用した需要予測により、配送の過不足を減らし、適切な輸送計画を立てることが可能になります。
データ分析に基づいた精度の高い物流管理が実現可能になると考えます。
さらに、自動運転技術を導入することで、最適なルート計算を行い、燃費の向上を図ることができます。人為的な運転のばらつきを抑え、一定の効率的な運行を維持することが可能になります。
(ただ、これはかなり先のことになるかもしれませんが…)
電動・水素トラックの導入
もう少し先のことになるかもしれませんが、電動トラックや水素燃料電池トラックの普及が進めば、物流分野でのCO2排出削減に大きく寄与することになります。
充電インフラや水素供給ネットワークの整備が進めば、従来のディーゼル車と遜色のない利便性を実現できる可能性があります。
モーダルシフトの推進
他の業界を巻き込む議論になりますが、鉄道輸送や船舶輸送への切替えを進めることで、CO2排出量を大幅に削減することが可能になると考えられます。
実際、欧州ではモーダルシフトが進んでおり、日本でもこの動きを加速することが求められています。
今後企業があらたに注目すべきCO2削減の分野
今後、企業はより革新的なCO2削減策を模索する必要があります。
検討すべきと思われる分野は以下のとおりです。
カーボンニュートラル認証の取得
まずはカーボンニュートラル認証の取得についての検討が挙げられます。
ISO 14064などの国際認証を取得することで、企業の環境対策への取り組みを強くアピールできます(ISO 14064の詳細は環境省のスライドをご覧下さい。)。
投資家や消費者の環境意識の高まりにより、カーボンニュートラルへの取組みが競争力の重要な要素となっていくものと見込まれます。
ブロックチェーンを活用したCO2排出量の可視化
また、透明性のあるデータ管理を可能にするブロックチェーン技術を活用することで、企業のCO2削減努力を明確に示すことが可能となるため、こうした技術の活用も検討に値します。
これは同時に、企業間でのCO2排出取引(カーボンクレジット市場)の活性化にも貢献すると考えられます。
消費者の・消費者による意識改革とエコ物流
もう1点、我々の、そして我々による企業に対する意識改革に向けた取組みも要検討です。
消費者の購買行動が企業の環境対策に影響を与える時代となっており、エコ配送などの選択肢を増やすことが重要だと考えます。
また、配送頻度の見直しや、環境負荷の少ない梱包材の採用も有効な手段となりえます。
まとめ
上で述べたように、流通業界におけるCO2削減は、企業間協力や技術革新によって急速に進んでいます。
花王とキリンビバレッジの取組みはこの点についての具体的な成果を示しており、他の企業にも良い影響を与えるものと見込まれます。
今後も、上で述べた、物流ネットワークの最適化、電動トラックの導入、モーダルシフトの推進などを進めることで、さらなる環境負荷の低減を期待することができます。
カーボンニュートラルへの移行を加速し、持続可能な社会の実現に貢献することが、企業だけでなく、我々消費者の重要な役割となると考えます。
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