国内におけるSAFの最新動向と展望

ESG

1. はじめに

近年、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速しており、航空業界においても環境負荷の低減が求められています。
その中で、持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF)が注目を集めています。
特に日本では、2025年度から国産SAFの供給が始まる予定であり、国内企業の関与も進んでいます。
最近の動向として、コスモエネルギーホールディングスとそのパートナー企業が出資する合同会社・SAFFAIRE SKY ENERGY(サファイア スカイ エナジー)が、国内で製造するSAFを2025年度から日本航空(JAL)および全日本空輸(ANA)に供給開始することを発表しました。
これは、日本国内で初めてSAFのサプライチェーンが構築される重要な一歩となります。
本記事では、SAFの基本的な情報や国内外の動向、企業にとってのビジネスチャンスについて説明していきます。

2. SAFとは

SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは、従来の化石燃料に代わる持続可能な航空燃料のことを指します。主に以下のような原料から製造されます。
(1) 廃食用油
(2) 植物由来の油脂(バイオ燃料)
(3) 廃棄物(家庭ごみ、産業廃棄物など)
(4) 合成燃料(Power-to-Liquid技術を用いたもの)
SAFは、化石燃料に比べてCO2排出量を大幅に削減できるため、航空業界の脱炭素化に大きく貢献すると考えられています。
また、国際民間航空機関(ICAO)が掲げる「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」の目標達成においても、SAFの普及は不可欠です。

3. なぜSAFが重要なのか

航空業界のCO2排出量は世界全体の約2~3%を占めており、その削減が喫緊の課題となっています。
国際線ではICAOの「CORSIA(国際航空炭素オフセット・削減制度)」が導入され、2024年以降、2019年比でCO2排出量を15%削減することが求められています。
また、日本政府は「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、SAFの利用促進を政策の一環として掲げています。
これに伴い、国内でもSAFの製造・供給体制の整備が進められており、航空業界のみならず、燃料供給業者や産業界全体に影響を与えています。

4. SAFに関する現在の法的規制の状況

SAFの普及と市場拡大には、各国政府や国際機関による法的規制が重要な役割を果たしています。
日本においても、政府がSAFの普及促進を支援するための法的枠組みを整備しつつあります。

(1) 日本国内の規制

日本では、現在のところ、制限する側面の制度が整備されているわけではないと考えられます。
一方で、優遇策については整備が進められようとしています。具体的には、環境省および国土交通省が中心となり、SAFの導入を促進するための補助金・税制優遇策が検討されています。
また、国内航空業界においてSAFの一定割合の利用を義務付ける制度の導入も議論されており、企業にとっての規制適応が求められています。

(2) 国際的な規制

ICAOのCORSIA制度により、航空会社はCO2排出削減のためにSAFの利用やカーボンオフセットを行うことが求められています。
EUでは、「ReFuelEU Aviation」政策が採択され、2030年までに航空燃料の一定割合をSAFに置き換えることが義務化される予定です。
アメリカでは、バイデン政権の「SAFグランドチャレンジ」により、SAF生産の税制優遇が強化されています。

5. 企業がSAFビジネスにこれから関わる機会

企業が今後SAFビジネスに関わりたいと考える場合、以下の方法が考えられます。

(1) ESG投資とカーボンクレジット市場への参入

SAFの導入拡大に伴い、企業はESG(環境・社会・ガバナンス)投資の一環としてこの分野に関心を寄せています。
カーボンクレジット市場も活性化しており、投資家や金融機関にとっても新たなビジネス機会が広がっています。
以下に述べるような石油精製や技術開発に関わる意向がない企業にとってはこの方法が最も容易な方法と考えられます。

(2) 燃料供給と製造への参入

SAFの供給が本格化する中、石油精製企業や化学メーカーがこの分野への参入を進めています。
特に、既存の石油精製設備を活用しながら、バイオ燃料の生産能力を拡大する動きが見られます。
また、食品業界や廃棄物管理業者にとっても、廃食用油の回収・精製事業は新たな収益源となる可能性があります。

(3) 技術開発と研究投資

バイオ燃料の効率的な生産技術やPower-to-Liquid(PtL)技術の研究開発が進められています。
特に、再生可能エネルギーを利用した合成燃料の生産が注目されており、エネルギー企業や大学・研究機関が連携し、新たな技術革新を推進しています。

(4) 供給インフラと物流の整備

SAFの供給体制を確立するためには、空港や燃料供給施設のインフラ整備が必要です。
物流業界にとっても、SAFの輸送・保管システムの構築は新たな事業機会を生み出すことになります。
供給チェーンの最適化を通じて、より持続可能な流通網の構築が求められることになるため、インフラの整備にはニーズがあるものと考えられます。

6. まとめ

SAFは、航空業界の脱炭素化を推進する上で不可欠な要素であり、国内外でその導入が加速しています。
日本でも2025年度から国産SAFの供給が始まり、新たな市場が形成されつつあります。
SAF市場の動向を引き続き注視し、ビジネスの可能性を探ることが、持続可能な社会の実現と企業の成長の両立に繋がるのではないかと考えています。

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