2024年版「企業価値を高めるESG指標トップ30」から見る日本企業のESG経営の切り口

ESG

はじめに

近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)は企業経営における重要な評価軸として注目されています。
その中で、2024年11月18日、アビームコンサルティング株式会社が、2024年版「企業価値を高めるESG指標トップ30」を公表しました。
指標に関する図を引用します。

(引用元: https://www.abeam.com/jp/ja/news/2024/1118/)
この指標は、企業が持続可能な成長を達成し、競争力を強化するために注目すべき具体的な要素を浮き彫りにしています。
この指標は早稲田大学の柳良平・客員教授が提唱した「柳モデル」に基づいて策定されているとのことですので、まずは「柳モデル」について説明します。

柳モデルとは何か?

「柳モデル」とは、ESG評価を通じて企業価値を測定・向上させるための独自のフレームワークです。
このモデルでは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の各要素を、企業活動の実態に即して具体的な指標に落とし込み、それらを基に企業価値への影響を評価します。
特徴として以下の3つが挙げられます。

企業価値との直接的な関連性の重視

柳モデルでは、単なる環境・社会・ガバナンスの善行にとどまらず、それらがどのように企業価値を向上させるかに焦点を当てています。
指標ごとの具体的な影響が明確化されている点が特徴です。

日本企業特有の課題への対応

このモデルは、日本の企業文化や市場環境を考慮して設計されており、他国のESG評価基準との差別化を図っています。
例えば、役員構成や人材育成における特有の課題を深く掘り下げています。

データに基づく透明性と実効性

柳モデルでは、測定可能なデータを基に指標を設定し、それぞれの進捗を透明性高く評価します。
これにより、企業が具体的な改善策を策定・実行しやすくなっています。

柳モデルに基づいた今回のランキングは、日本企業の競争力向上における実践的な手引きとなるものです。本稿では、このランキングをもとに、企業がどのようにESG経営を進めるべきかを考えてみます。

役員の平均年齢が示すガバナンスの柔軟性と課題(第1位)

ランキング第1位に挙げられた「役員の平均年齢」は、ガバナンス分野の中核となる指標であり、企業統治の柔軟性や未来志向を評価する重要な要素です。

役員の平均年齢が低いことの強み

若い役員が増加することで、以下のような効果が期待されます。

・革新性の促進
若手役員は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラルといった現代的な課題に対応する際に、新しい視点やアイデアを経営に反映させる能力を持っています。

・リスク対応力の向上
若い役員は、変化の激しい市場や技術の進展に対して柔軟に対応できるため、企業が環境変化に即応する力を向上させます。

高齢な役員層の利点とバランスの重要性

一方で、役員の平均年齢が高いことは以下のような利点をもたらします。

・経験と深い洞察力
長年の実務経験を持つ役員は、リスクの予測や回避策の構築に寄与します。

・意思決定の信頼性
高齢の役員は、長期的な視点で意思決定を行うため、持続可能な成長を目指す経営戦略の策定において信頼性が高いです。

理想的な経営体制は、若手役員とベテラン役員がバランスよく共存することです。
若年層ばかりでも、高齢層ばかりでもなく、多様な年齢層の役員が存在する必要がある、ということになります。

日本企業の現状と課題

日本企業では、役員の平均年齢が高いことが特徴であり、次のような課題が浮き彫りになっています。

・世代交代の遅れ
役員層の新陳代謝が遅れることで、新しい価値観や技術の導入が遅れるリスクがあります。

・若手登用の進展不足
意思決定プロセスに若手が参加する機会が限られており、次世代のリーダー育成が課題となっています。

改善のためのアプローチ

・役員候補者プールの多様化
まずは、多様な人材を役員候補者として登用することで、組織に新しい風を吹き込む、というアプローチが考えられます。

・次世代リーダーの育成
また、若手社員の経営スキルを早期に向上させるための育成プログラムを整備し、次世代の経営層を計画的に育てる、という方法も有効だと考えます。

・世代間の協働
上記のとおり、世代の多様性が重要であり、若手とベテランが協力して、双方の視点を取り入れた意思決定を行う仕組みを構築する方法も考えられます。

環境(Environment):循環型社会と気候変動への対応

環境分野の指標では、以下の項目が重要視されています。

循環型社会の実現
「産業廃棄物排出量(第2位)」や「リサイクル率(第3位)」は、資源循環型の経営を実現するための重要な指標です。
これらの取り組みは、環境負荷を低減しながらコスト削減や新しいビジネスチャンスの創出につながります。

気候変動への対応
「CO2排出量・スコープ2(第5位)」や「CO2排出量・スコープ3(第22位)」は、再生可能エネルギーの活用やエネルギー効率の向上など、企業の具体的な努力を測る重要な指標です。

社会(Social):人材育成と従業員エンゲージメント

社会分野の指標では、以下のような取り組みが注目されています。

人材育成
「総研修時間(第9位)」や「新規管理職登用数(第15位)」は、企業が従業員のスキル向上にどれだけ投資しているかを示します。
これらの指標を向上させることで、組織全体の能力向上が期待されます。

従業員エンゲージメント
「従業員エンゲージメント(第25位)」は、従業員の生産性や企業文化の強化に直結する重要な指標です。
従業員が働きやすい環境を整えることで、企業の競争力が強化されます。

企業価値向上に向けた行動指針

上記のとおり、検討する要素が満載であり、アビームコンサルティング株式会社が発表した2024年版「企業価値を高めるESG指標トップ30」は、企業の持続可能な成長を支える指針として非常に有用な情報だと考えることができます。
役員の平均年齢をはじめ、環境や社会における指標を活用することで、企業は競争力を高めるだけでなく、長期的な成長基盤を築くことができるため、ESGについて興味がある方は是非冒頭のリンク先をご覧下さい。

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