[マレーシア] 1:3インターンシップポリシーの概要

ESG

はじめに

マレーシア人的資源省は、就業ビザを取得して就業する者がいる企業に対し、2025年1月15日付で、外国人と(有給)インターンの比率を最大で1:3とすることを求める「1:3インターンシップポリシー」(以下「本ポリシー」といいます。)を導入する旨発表しました。
この発表は事前に周知されたものではなかったようで、マレーシアにおける日本企業含む外資系企業からは驚きと懸念の声が上がっています。
以下では本ポリシーについて、現在把握できている内容について説明します。

1:3インターンシップポリシーの概要

本ポリシーは、マレーシア政府が国内人材の育成と雇用促進を目指して導入しようとしている政策です。
本ポリシーは、外国人労働者を採用する企業に対して、マレーシア国内の学生にインターンシップの機会を提供する義務を課すものとなり、
この取り組みを通じて、学生が実務経験を得て労働市場での競争力を高めることが期待されています。
同時に、(実際にそのとおりかどうかは別として、)企業は、この制度を活用して若い才能を発掘し、将来的な採用につなげることが可能となる、とされており、国内の教育機関で学ぶ学生にとって、学業要件の一環として実務経験を積むための重要な手段を提供するとともに、産業界の人材ニーズにも対応する形で設計されているとしています。

政策の背景と目的

本ポリシーが打ち出された背景や目的は以下のとおりと考えられます。
近年、マレーシアでは急速な経済成長とともに、高度なスキルを持つ人材への需要が高まっていますが、その一方で、多くの学生が卒業後に労働市場で即戦力となるための実務経験を十分に積めない現状が課題となっている、とされます。
この状況を踏まえ、本ポリシーには、以下のような目的があると考えられます。

実務経験の機会提供

国内の大学や職業訓練校の学生に対し、有意義なインターンシップの機会を提供することで、卒業後の就業準備性を向上させる。

企業の協力による人材育成

企業がインターンシッププログラムを提供することで、業界と教育機関の連携を強化し、産業界のスキルニーズに対応する。

外国人労働者依存の軽減

外国人労働者を雇用する企業にインターンシップ提供を義務付けることで、国内人材のスキルを向上させ、労働市場での外国人労働者への依存度を徐々に減らす。

本ポリシーの具体的内容・要件

本ポリシーの実施にあたって、企業と学生双方が満たすべき条件が定められています。
具体的には以下のとおりです。

対象企業

マレーシア外国人労働者サービスセンター(Malaysia Expatriate Service Centre)やデジタル経済公社(Malaysia DigitalEconomy Corporation)の下で外国人労働者の雇用パスを取得している企業

本ポリシーの適用除外となる場合

本ポリシーの適用除外となる場合は以下の場合であるとされています。
マレーシアで2年未満に事業を展開している新規企業
代表事務所または地域事務所(Representative or Regional Offices)を有する企業
政府から免税措置を受けている企業(特にデジタルやエネルギーなどの主要産業分野では対象外)
その他の免税措置の申請については、この政策の試験段階でのフィードバックに基づいて、関連委員会が検討する可能性あり

対象となる学生

マレーシア国内の大学、専門学校、または職業訓練校に在籍する学生
プログラム認定を受けた教育機関の学生であること

インターンシップの条件

期間: インターンシップは最低10週間行うことが必要。
報酬: インターンシップ生には、最低月額RM500(特定条件でRM600)を支給。
認定: タレントコープにより認定されたプログラムであること。

試行期間と導入時期

本ポリシーは、最初に試行期間が設けられ、その後に本格運用が予定されています。具体的には以下のとおりです。
試行期間: 2025年2月15日から12月31日まで
本格運用: 2026年1月1日から
試行期間中は、企業がこの制度に適
応しやすいように柔軟な規則が適用される予定であり、政府は効果を測定して改善を図ることととされています。

本ポリシーが与える影響

本ポリシーが本格的に導入された場合、本ポリシーの当事者となる学生及び企業、並びに産業全体への影響がありうると考えられます。
この産業全体への影響は、日本企業含む外国企業の目指すところと一致するかどうかは議論があるように思われますが、これが本ポリシーの目的とするところと考えられます。

学生への影響

実務経験を積むことにより、卒業後の就業機会が大幅に拡大する。
現場でのスキル向上に加え、業界での人脈形成やキャリア構築にも繋がる可能性がある。

企業への影響

企業は、インターンシッププログラムを通じて将来の人材を早期に発掘し、育成することが可能となる。
税控除などのインセンティブを享受できる場合がありうる。

産業全体への影響

国内人材のスキル向上が促進され、産業界の競争力が強化される。
外国人労働者への依存度が徐々に減少し、マレーシア経済の持続可能性が向上する。

まとめ

本ポリシーは、マレーシアの人材育成と経済発展に向けた重要な施策となる可能性があります。
学生、企業及び政府が一体となってこの政策を実行することにより、労働市場のニーズに合ったスキルを持つ人材を育成し、国内産業の発展を支援することが可能となると考えられます。
一方で、インターンの費用の点を含め、雇用パスを取得している従業員を雇用する企業(多くの日本企業がこれに該当すると思われます。)については、必ずしも有益な制度とはならない可能性が高い点については留意が必要です。

なお、本ポリシーについてはFAQが公表されておりますので、こちらも併せてご参照ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました